
「あの店、潰れるの時間の問題だよ」という声を聞いた夜から、私は毎朝一時間早く起きた
ライフスタイル
小さなパン屋を継いで3年目の秋。窓の外から流れてきたひと言が、今もどこかに残り続けています。
窓越しに聞こえた声
両親が30年かけて育てた店を引き継いで以来、休んだ記憶がほとんどありません。客足は少なく、余裕もない日々でしたが、毎朝生地をこねることに意味があると信じていました。
ある秋の夜、厨房を片付けていると、玄関の外で彼が電話している声が聞こえてきました。「あの店、潰れるのも時間の問題だよ」。友人との会話の中のひと言で、笑い混じりでもなく、ただ淡々とした声でした。スポンジを持ったまま、しばらく動けませんでした。
それでも続けた理由
翌朝、彼には何も言いませんでした。知っていると伝えることが怖かったのか、言葉にしたら本当のことになる気がしたのか、自分でもよくわかりません。ただ、いつもより一時間早く起きて、生地をこねました。
「また来たよ」と言ってくれるお客さんのために。親が積み上げてきたものを終わらせたくなかった。その気持ちだけで、毎日厨房に立ち続けました。涙がこぼれていることに気づいたのは、パンが焼き上がったあとでした。
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行列ができた朝

























