給料日のたびにこぼしていた俺の本音と、財布の奥に残る1枚の明細

コラム

同じ数字が並んでいた通帳

「これ、うちの全部」

生活費の通帳から順にめくり、積立の通帳を開いて、向かいの妻を見ました。並んだ残高を見ても、何のために貯めているのかは分かりませんでした。

「これ、何の積立?」

「車検と、部屋の更新料。来年まとめて出るから」

余裕だと思っていた数字の行き先は、とっくに決まっていたのです。ノートを引き寄せてページを戻すと、先月のところに送別会の5000円の行。封筒に足されていた分でした。同じ月の妻の欄には、送別会へとだけ書き添えてありました。

毎月こぼしていた言葉を、妻はこのノートを付けながら聞いていたことになります。気づくと、頭を下げていました。

「ごめん。俺、あの紙だけ見て決めつけてた」

「私も、大丈夫しか言ってこなかったから」

妻は、あの紙が何なのかを聞いてきませんでした。

そして...

次の給料日から、封筒を受け取る前にノートを開くようにしています。積立の欄を指で確かめてから、封筒を財布に入れる。それだけの手順ですが、あれからため息は出ていません。

あの明細は、今も財布のカード入れの奥にあります。何の紙だったのかを妻に話すきっかけは、まだつかめていません。

(30代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

  • X
  • Line