
週末のもみじ狩りの計画中、彼の部屋から聞こえた女性の声→「テレビだよ」と言う彼に、私は黙って通話を切りました
コラム
問い返したメッセージには、少し間を置いて答えが返ってきました。それ以上は聞かないまま迎えたもみじ狩りの日、彼はもみじの下のベンチで、ある話を切り出しました。
スマホを耳に当てたまま、ベッドの上で彼の話に相づちを打っていました。次に会う日の段取りを決めるだけの、いつもの通話です。それを自分から切ることになるとは、思ってもいませんでした。
待ち合わせの駅を決めかけたとき
彼とは付き合って1年半になります。お互いの家は電車で数駅離れていて、会えない日は少しだけ通話するのが習慣でした。
その日も、週末のもみじ狩りの計画について話し合っていました。待ち合わせの駅を決めかけたとき、電話の向こうから女性の声がしたのです。
「ねえ、タオルどこ?」
すぐ近くで呼びかけるような、はっきりした声でした。聞き返すより先に、彼が言いました。
「テレビだよ」
彼は1人暮らしです。テレビのセリフにしては、あまりに生活の中の言葉でした。次の相づちを打つ代わりに、画面の赤いボタンを押していました。
問い返したメッセージへの返事
切ってすぐ鳴った着信には、出ませんでした。
少しして、メッセージが届きました。
「急に切れたけど大丈夫?」
切れたのではなく、切ったのです。
問い詰める文章を打っては消し、結局送ったのは短いメッセージでした。
「テレビって、何の番組?」
既読はすぐにつき、少し間を置いて返事が届きました。
「ドラマ。音量上げたままだった、ごめん」
それでも、あの声は近すぎました。職場の人か、昔の知り合いか。候補を挙げるたびに、どれも彼の部屋にいる理由にはなりませんでした。
「そっか」
それだけ送って、スマホを伏せました。それから数日は、何が届いても短い相づちしか返せませんでした。
もみじ狩りの前日、彼から短いメッセージが届きました。
「紅葉の日、ちょっと話したいことある」
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もみじの下のベンチ




























