
俺が「はじめまして」で通した取引先の担当者。ロビーでの一言を、その上司に聞かれていた
コラム
名刺入れを差し出したのは
「今の担当、前に合コンで帰らせた子だよ。気づいてないみたいだから助かったわ」
笑ってそう言うと、後輩は顔をこわばらせました。
「え、それまずくないですか」
「お忘れ物です」
振り向くと、先方の課長が立っていました。差し出されたのは、俺の黒い名刺入れ。課長は笑っていませんでした。受け取って頭を下げる間に、課長は次のエレベーターで戻っていきました。
翌日、うちの部長に呼ばれました。
「ロビーでのお前の話、先方の課長さんが聞いていたそうだ。今回は見送りになった。お前はこの件から外れろ」
それでも、彼女なら何とかなると考えたのです。何も覚えていない担当者なら、頼めば口添えしてくれるはずだと。
そして...
打ち合わせから2日後、もらった名刺の直通番号に電話をかけました。
「先日はありがとうございました。少し行き違いがあったようで、担当の方から課長さんにお口添えいただけないかと思いまして」
「はじめまして、とおっしゃいましたよね」
「え?」
「1年前に一度お会いしています。そのとき帰っていいと言われたので、今回も私から申し上げることはありません」
「いや、あの」
「失礼いたします」
先方の課長に電話をかけても、取り次いではもらえませんでした。彼女は、あの日の言葉を覚えていました。忘れているはずだという俺の当ては、もう通じません。
(20代男性・営業職)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)































