
配達員の俺が、あの家の置き配写真にだけ花壇を入れ続けた理由
コラム
撮り直したコスモス
秋に入って、別の区域への異動が決まりました。
最後の配達の日、あの家の花壇ではコスモスが咲いていて、薄いピンクの花が箱の後ろに収まるまで何枚か撮り直すことに。
トラックに戻ってから、アプリのメッセージ欄を開きました。
「本日でこの地区の担当を外れます。お花のおかげで、このお宅だけは迷わずに届けられました。ありがとうございました」
迷わずに、と書いたのが、本当の理由に一番近づいた一文でした。最初の週の失敗までは、書けませんでした。
しばらくして、半年間のお礼と、新しい場所での無事を気づかう返信が届いたのです。本当のことを伝えようと書きかけては消し、結局は既読をつけただけでアプリを閉じました。
そして...
新しい区域にも、よく似た外観の家が並ぶ通りがありました。そういう場所では、箱を下ろす前に、まず表札と玄関まわりの特徴を探すようになりました。
あの家の花壇がその後どうなったのかは分かりません。新しい区域で最初に覚えた目印は、ある家の門柱の横に置かれた青い傘立てでした。
(20代男性・配送ドライバー)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)




























