
「そろそろですね」を送る日を、私は1冊のノートで決めていました
コラム
短い返事にした理由
ノートの数字を全部書き出せば、答えにはなります。けれど打ってみると、ただの計算の説明にしか見えず、送る手前で消しました。
本当に伝えたかったのは、数字よりも、あの日の「すみません」のほうでした。もう謝らなくていいように先に声をかけていたのだと、メッセージではなく顔を見て話したいと思ったのです。そう決めて、短く返しました。
「次にいらしたとき、お話ししますね」
ほどなくして、お客さまから「では、この日でお願いします」と予約の希望が届きました。選ばれていたのは、空いていた中で一番近い日。「お待ちしています」と返して、ノートの次の行にその日付を書き入れました。
そして...
予約の日、お客さまの前髪はまゆを少し越えたところで、まだ割れてはいませんでした。ノートを見せて話すと、お客さまは数字の並びを指でなぞりながら、しばらくページを眺めていました。「職場の人、誰も気づかないんですよ」と言って、少し笑っていました。その日、椅子に座ったお客さまの口から「すみません」は出ませんでした。
カットを終えたあと、いつもどおりお客さまのページに今日の長さを書き込みました。次の連絡をいつ送るかは、まだ数えている途中です。
(30代女性・美容師)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)































