
夫とは笑うのに、私の前では難しい顔の義父。帰り際の玄関で呼び止められて「あのな」
コラム
帰り際、玄関で義父が初めて私を呼び止めました。けれど続いたのは、いつもと変わらない短い言葉。義父は口を開きかけたまま、目をそらしたのです。
義母と台所でスイカを切っていると、居間から大きな笑い声が聞こえてきました。夫と、義父の声です。結婚して2年、義父があんなふうに笑うのを、私は一度も聞いたことがありませんでした。
何を話しても「ああ」と「そうか」だけ
義実家へは車で1時間ほど。年に数回訪ねるたび、義母は明るく迎えてくれましたが、義父はいつも眉間にしわを寄せた難しい顔で、新聞やテレビのほうを向いていました。
仕事の話をしても、手土産を渡しても、返ってくるのは「ああ」か「そうか」だけ。目が合うと、先にそらすのは義父のほうでした。嫁いでからずっと、この家の居間では、自分だけがまだお客さんのままでした。
帰りの車で一度だけ、夫に聞いてみたことがあります。
「お義父さん、私のこと苦手なのかな」
「気にしなくていいよ」
夫はそう言って、カーナビの画面に目を戻しました。それ以上は聞けないまま、手土産の選び方や話しかける順番ばかり考えるようになっていきました。
スイカを運んだ居間で
この日、よく冷えていたスイカを切り分けて大皿に並べ、居間へ運びました。ふすまを開けると、義父はちょうど夫の肩をたたいて笑っているところでした。
義父は私に気づいた途端に笑い声を止め、手を膝の上に戻しました。義父の口元は引きしまり、眉間にはいつものしわ。
「ああ、すまんね」
大皿を受け取る義父の声は、さっきとは別人のように低いものでした。
夫の隣に座り、私もスイカを1切れ取りました。義父はテレビのほうを向いたまま、種を小皿に1つずつ出していました。夫が近所の話をしても、義父の相づちは「そうか」だけ。私がいるだけで、この部屋の空気が変わってしまうのかもしれないと思い、私は自分の皿の上ばかり見ていました。
1切れを食べきらないうちに皿を重ねて台所へ戻り、蛇口をひねると、水の音で居間の声は聞こえなくなりました。
帰り際、玄関で靴をはいていたときのことです。後ろで床のきしむ音がして振り返ると、義父が上がり框に立って、まっすぐこちらを見ていました。
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玄関で呼び止められて





























