
「今度、母に会ってから決めて」と言われた俺→その前に1人で実家を訪ねて、お母さんに打ち明けた事情
コラム
肉じゃがが好きだと話したのは、彼女のお母さんと2人で向かい合ったときでした。あの日、俺は謝りたいことと、頼みたいことを1つずつ抱えて電車に乗ったのです。
辞令の紙を受け取ったのは、彼女にデートを断られる少し前のことでした。行き先は、今の部屋から新幹線で4時間かかる町です。彼女にどう伝えるか、俺はずっと決められずにいました。
言ってはいけなかった言葉
彼女が実家に帰るたび、お母さんが1人で暮らしていることを思い出しました。
転勤についてきてほしいと言えば、彼女はお母さんを置いていくことになります。
そんな選択をさせたくなくて、話を切り出せないまま日が過ぎていきました。
その週もデートを断られ、電話口でつい口に出てしまったのです。
「家族と俺、どっちを取る」
言った直後に、ひどいことを言ったと気づきました。
「今度、母に会ってから決めて」
彼女にそう言われ、電話を切ってからもしばらくそのままでした。
1人で訪ねた家
次の休み、俺は1人で彼女の実家を訪ねました。
前に彼女から聞いていた最寄り駅と住所を頼りに、玄関のチャイムを押したのです。
驚いた顔のお母さんは、「まず洗面所で手を洗っておいで」と言ってお茶をいれてくれました。
向かい合って座り、電話で言ったことをそのまま打ち明けて謝りました。
転勤のことも、彼女についてきてほしいという気持ちも、全部話すつもりで来ていたのです。
「娘には、私がいなくても平気な顔をしてほしかったの」
もう十分助けてもらったから、と笑ったあと、お母さんは付け加えました。
「あの子には、私から言わせてちょうだい」
帰り際に好物を聞かれ、肉じゃがだと答えたのです。
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