
「お前は練習台なんだから、黙って聞いてて」と言った俺→練習で読まなかった最後の段落
コラム
最後の段落を読み終えると、新郎が目元を押さえていました。拍手の中で彼女を探した俺は、まだ一番大事なことを彼女に伝えていなかったのです。
友人代表のスピーチを頼まれたのは、式の2か月前でした。人前で話すと言葉がつかえる俺が、練習相手に選んだのは彼女です。彼女の前でだけは、なぜか最後まで話せたからでした。
練習台という言い方
新郎は大学時代からの友人で、俺と彼女を引き合わせてくれた人です。原稿には、その日のことも書きました。俺にとっては、そこがスピーチの芯でした。
「私のところは削ったほうがいいよ。新郎の話を増やそう」
彼女がそう言ったのは、ちょうどその段落で何度もつかえていた最中でした。削られたら、一番言いたいことがなくなってしまう。焦った俺の口から出たのが、あの言葉です。
「お前は練習台なんだから、黙って聞いてて」
クッションを床に置く音が聞こえて、言い方を間違えたと分かりました。それでも謝るより先に、便箋に目を戻していたのです。
読まなかった最後の段落
最後の段落を練習で読まなかったのにも、わけがありました。学生時代、俺が一番落ち込んでいた時期に、新郎が毎日電話をくれた話です。彼女にもまだ話したことがなく、声に出せば泣いてしまう気がしていました。
「そこは?」と聞かれて「本番で読む」としか言えなかったのは、そのためです。
練習を重ねるうちに、気づいたこともありました。彼女の顔を見ながらだと、不思議と最後まで話せるのです。本番では、彼女の座るテーブルを目印にしようと決めていました。
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マイクの前で




























