
「俺に感謝しろ」が口ぐせの俺→祖母への荷物に彼女の名前を書き続けたわけ
コラム
座敷で目をそらしたわけ
玄関の戸を開けた祖母は、俺より先に彼女の顔を見ました。
「よく来てくれたねえ」
座敷で彼女の両手を握った祖母は、本当にうれしそうでした。
「毎月、ありがとうね」
祖母は続けました。
「この前の梨も、甘くてねえ。あなたが選んでくれたんでしょう」
彼女がこちらを見たのは分かっていました。目を合わせたら全部が顔に出てしまいそうで、庭の木から目を離せなかったのです。
「いえ、あの」
彼女が言いかけると、祖母はその手を握り直しました。
「あの子をよろしくね。本当に、あなたのおかげ」
湯のみを口に運びながら、祖母の声だけを聞いていました。
そして...
帰りのバスがしばらく走ったころ、電話のことから送り状のことまで、全部を打ち明けたのです。
「勝手に私の名前を使わないで」
彼女の言うとおりです。感謝しなければいけなかったのは、ずっと俺のほうだったのです。
(20代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)






























