「暇な時だけ呼ぶから」と彼に言った私が、週末ごとに通っていた場所

コラム

電話の向こうに聞こえていたのは、教習車のウインカーの音でした。助手席に彼を乗せた日、私が向かっていたのは高速道路の先の…。

教習所の受付で、ペーパードライバー講習の申込書を書きました。免許を取ってから6年、一度もハンドルを握っていなかったのです。講習は週末に2時間ずつ、全部で8回でした。

4時間の帰り道

彼の実家は、車で4時間かかる海沿いの町にあります。毎年お盆になると、彼は1人で運転して帰っていました。
去年、戻ってきた彼が言っていたのを覚えています。帰り道の最後の1時間が、いちばん長く感じると。
今年は一緒に行こうと誘われていました。彼の両親に会うのは初めてです。せめて運転を半分は代われるようになりたい。それが、講習を申し込んだわけでした。
ただ、先に言えば彼は「無理しなくていい」と止めるはずです。

教習車の中で切った電話

「今週も、会えないの」
彼から電話がきたのは、講習が始まる直前でした。教習車の中では、教官が点検のためにウインカーを出していました。
「ごめん、ちょっと用事があって」
何の用事か聞かれると、うまくごまかせませんでした。
「暇な時だけ呼ぶから」
自分でも冷たい言い方だと思いました。それでも、ほかに切り上げる言葉が見つからなかったのです。電話を切ったあと、教官に「大丈夫ですか」と聞かれ、小さくうなずいただけでした。
それから1か月、週末はすべて講習でした。メッセージが短くなったのも、話せば言ってしまいそうだったからです。

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白い車の運転席
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