「飲み会に彼女を呼ぶ男は無理」と言った俺が、座敷に彼女を呼ぶしかなかった事情

コラム

あの日の座敷で、俺は自分で決めていたことを1つ破りました。そうしてでも、先輩との約束だけは作りたくなかったのです。

職場の飲み会が始まって2時間ほどたった頃、隣の席の先輩がグラスを置いて俺のほうを向きました。先輩には前から、知り合いとの食事会に何度も誘われています。そのたびに、彼女がいるからと断ってきました。

先輩の一言

「本当は彼女なんていないんだろ。いないなら来週の食事会な」
先輩はそう言って、周りの同僚たちと笑いました。悪気がないのは分かっています。ただ、ここで笑って流せば、来週の予定は本当に決まってしまいそうでした。
彼女以外の誰かと、紹介の場で会う約束はしたくない。かといって、職場の先輩との空気を悪くすることもできません。
少し前に、家のソファで「飲み会に彼女を呼ぶ男は無理」と言ったばかり。それでも俺は、トイレに立つふりをして店の外に出ました。

送ったメッセージ

「今から店に来てもらえない?」
続けて店の地図を送ると、彼女からどうしたのかと返ってきました。理由を書こうとして、指が何度も画面の上で迷います。先輩に疑われているなんて、文字にするのは格好悪すぎました。
「来てから話す」
それだけ送って一度席に戻り、彼女が着く頃にまた店を出て、入口の明かりの下で待ちました。電車で来た彼女は、上着を急いで羽織ったような姿でした。
「ごめん、少しだけ顔を出して」

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座敷のふすまの前で
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