「変な顔」としか言えなかった私→展望台の写真をロック画面にした日、ガラスに映る彼の隣で見ていたもの

コラム

展望台で撮ってもらったツーショットを、私はどうしても消せませんでした。恥ずかしかったのは、彼の格好でも、彼の隣を歩くことでもなかったのです。

雑貨屋のショーウィンドウに、彼と並んで歩く私が映っていました。その顔が目に入った瞬間、私は彼の手をよけていました。付き合って半年、ガラスの前で顔をそむけたのは、これが初めてではありません。

ガラスに映る顔

彼と歩いていると、自分の顔がゆるみっぱなしになることには前から気づいていました。
ショーウィンドウや電車の窓に映るたび、口の端が上がったままの自分と目が合います。友達と歩くときには、一度も見たことのない顔でした。
商店街で彼が手を取ろうとしたとき、この顔のまま手までつないだら、と思うと耐えられなくなりました。
「あなたと歩くの恥ずかしい」
とっさにそう言って、マフラーを鼻まで引き上げました。言い方を間違えたと気づいたのは、前を歩き出してからです。

消しといて、と言われて

カフェでもマフラーを外せずにいると、彼が言いました。
「恥ずかしいなら、展望台のやつも消しといて」
1か月前、係の人に撮ってもらった1枚のことでした。画面の中の私は、目がなくなるほど笑っています。「変な顔」としか言えず、彼に送れなかったのもそのせいでした。
「うん、分かった」と答えてスマホを開き、ゴミ箱のマークに親指を近づけました。
でも、あの写りの私は、これまでで一番いい顔をしていたのです。好きな人の隣にいると、誰が見てもすぐに分かる顔でした。

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