柴犬に吠えられるたび目をそらしていた俺が、犬へのあいさつを教わった場所

コラム

橋のたもとのベンチで

1か月がたった週末、また「今日も無理」と返しました。途中で怖くなったら、彼女に知られないまま帰るつもりだったのです。
橋のたもとのベンチに座って待ちました。
遠くに柴犬と彼女の姿が見えて、ベンチから立ち上がります。犬は俺に気づくと、すぐに吠えはじめました。
いつものように目をそらしかけて、店で教わったことを思い出します。ゆっくりしゃがみ、犬と目線の高さをそろえました。軽く握った手を、鼻の前にそっと差し出します。
吠えられても、手は引っこめませんでした。やがて犬が手のにおいをかぎはじめ、しっぽが左右に揺れました。
しゃがんだまま顔を上げます。
「いつも、この道なんだろ」
「なんでいるの」
すぐには答えられず、犬の背中ばかり見ていました。

そして...

「リード、持ってもいい?」
受け取ったリードは、思っていたよりずっと強く引っぱられました。
橋を渡りながら、犬が怖かったことも、犬カフェに通っていたことも話しました。
「ずっと、この子のことが嫌いなんだと思ってた」
彼女はそう言って、「最初から言ってよ」とあきれた顔をしました。
一緒に暮らしたいという話は、まだ切り出せていません。

(20代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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