「元カノのほうが料理上手だったな」と言った彼のご飯をやめた数日後→冷凍庫の製氷皿に貼られていたメモ

コラム

肉じゃがの湯気の向こうで、彼が箸を置きました。一緒に暮らし始めて1年、ごはんはほとんど私が作っています。その日の味付けも、いつもと変わらないつもりでした。ところが彼は、器を見つめたまま、軽い調子で口を開いたのです。

元カノと比べられた肉じゃが

「元カノのほうが料理上手だったな」

悪気がないことは、声の調子で分かります。だからこそ、余計に引っかかりました。

仕事帰りにスーパーへ寄り、献立を考え、片づけまで済ませているのは私です。比べる相手が、よりによって元カノでした。

自分の器を持って立ち上がり、流しに置いてから言いました。

「じゃあ明日から、自分のごはんは自分で作ってね」

「え、そこまで言う?」

笑いかけた彼は、私の顔を見て口を閉じました。

製氷皿に貼られたメモ

次の日から、作るのは自分の分だけにしました。

彼は最初の日、市販のたれで野菜炒めを作り、台所に甘辛いにおいを広げながら黙って食べていました。それからの数日、彼は毎日何かしら台所に立つようになりました。私が先にお風呂に入っている間に作り、私が出てくる頃には片づいています。何を作っているのか、のぞく気にもなれませんでした。

数日後、ハーブティーを冷やそうと冷凍庫を開けたときのことです。いつもの製氷皿がラップで何重にもくるまれ、その上に彼の字でメモが貼ってありました。

「さわらないで」

氷は、横に置かれた保存袋に移されています。ラップ越しでは、中身がよく見えません。製氷皿を取り出し、ラップの端に爪をかけました。

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