「元カノのほうが料理上手だったな」と言った俺が、数日後、彼女に隠れて製氷皿で凍らせていたもの

コラム

製氷皿に貼ったメモ

勝手に使ったと知られたら、あの一言がもっと格好悪くなります。正直に頼む勇気が出ず、彼女がお風呂に入っている間に自分の分を作りながら、少しずつすくって製氷皿でこっそり凍らせました。減ったと気づかれない量だけです。氷は保存袋に移し、製氷皿はラップで何重にも包んでメモを貼りました。

「さわらないで」

それから何日かして、彼女が製氷皿を取り出すのがソファから見えました。俺は慌てて声をかけました。

「それ、まだ開けないで」

振り返った彼女が聞きました。

「何が入ってるの?」

「今度ちゃんと言うから」

俺はそれだけ返しました。ちゃんと作れるようになってから話したい。そう思って、ソファに座り直しました。

そして...

凍らせた出汁を溶かして試すうちに、ようやく近い味になりました。次の休みの日、その肉じゃがを彼女の前に置き、頭を下げました。

「元カノのほうが上手なんて、言える立場じゃなかった」

彼女はひと口食べて、少し笑いました。

出汁を勝手に使ったことを打ち明けたのは、その夜です。製氷皿のラップを外して見せると、彼女はもう一度笑いました。

「次は出汁から自分でとってね」

その次の休み、俺は昆布を買ってきました。彼女は今も、自分の分しか作っていません。製氷皿には、また氷が並んでいます。

(20代男性・営業職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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