「孫の顔はまだ?」と玄関で聞く義母→止める夫に「あなたは黙ってて。これは私の楽しみなんだから」

コラム

「これは私の楽しみなんだから」。夫の制止にも耳を貸さない義母を前に、笑って流すための返事を、私はもう探していませんでした。

義実家の玄関の引き戸を開けると、奥の台所から義母の声が飛んできました。靴を脱ぐより先に届いたのは、もう何度目か分からない質問です。夫と目を合わせてから、私は笑顔を作って廊下を進みました。

玄関で聞かれる同じ質問

「孫の顔はまだ?」

義実家を訪ねるのは3か月から半年に1度。そのたび義母は挨拶より先にこの言葉を口にします。結婚して3年、最初の数回は「そのうちに」と笑って流していました。けれど同じ質問が積み重なるにつれ、その場しのぎの返事では済まなくなっていったのです。

私は会社員で、来春から新しいチームのリーダーを任されることが決まっています。夫とは何度も話し合い、子どものことはその仕事が落ち着いてから考えようと2人で決めました。

その事情を義母に説明したこともあります。返ってきたのは、ため息まじりの一言でした。

「仕事なんて、いつでもできるでしょう」

その日の帰りの車で、夫は「気にしなくていいから」と言ってくれました。それでも次の訪問が近づくと、手帳のその日付だけは見ないようにページをめくっていました。

夫がさえぎっても止まらない

この日は食卓に料理が並ぶなり、義母が身を乗り出して繰り返しました。「孫の顔はまだ?」

「32歳でしょう。もうのんびりしていられないわよ」

義母は取り皿を配りながら、私の年齢を指折り数えるように言います。義父は湯のみに手を伸ばしたまま、何も言いません。私は唐揚げを1つ口に運び、味の分からないまま噛み続けていました。義母はさらに続けます。

「私が元気なうちに、早く孫を抱っこさせてちょうだい」

「母さん、その話は」

夫が箸を置いて口をはさみました。ところが義母は、夫のほうを見もせずに続けます。

「あなたは黙ってて。これは私の楽しみなんだから」

私の楽しみ。その言葉だけが、テーブルの上にぽつんと残りました。私たちの暮らしや仕事の話は、そこに1つも入っていません。

何度も繰り返してきた「そのうちに」は、もう出てきませんでした。私は箸を、そっと箸置きに戻しました。

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