「家族と俺、どっちを取る」と迫った彼を実家に連れていくと→食卓で私より先に口を開いた母

コラム

初めて来たはずの家で、彼は迷わず洗面所のほうへ歩いていきました。食卓で「この前の話だけど」と切り出すと、私より先に母が口を開きます。その目は、私ではなく彼に向いていました。

改札を出ると、彼は手土産の紙袋を持ち直しました。実家の最寄り駅で降りるのは、彼にとって初めてのはずです。母に会わせると決めたのは、電話であの言葉を言われたからでした。

取り消したデートのあとで

母が1人で暮らす実家へは、月に2回ほど帰っています。
電球の交換や重い買い物の手伝いは、昔から私の役目です。
電車で2時間かかるので、帰る週末は彼とのデートを断ることになります。
その週も、母に頼まれた用事があってデートを取り消しました。
電話口で謝ると、彼は少し間を置いて言いました。
「家族と俺、どっちを取る」
付き合って2年、彼がこんな言い方をしたのは初めてです。
家族と恋人は、比べるようなものではないはずでした。
言い返したい気持ちをこらえて、「今度、母に会ってから決めて」と答えました。
電話を切ったあとも、あの声はしばらく耳から離れませんでした。

初めてのはずの家

玄関で母が出迎えると、彼は深く頭を下げました。
差し出した紙袋の中身は、駅前で買ったという焼き菓子です。
靴をそろえた彼は、私が案内するより先に洗面所のほうへ歩いていきます。
「場所、分かるの?」
「なんとなく」
彼はそれだけ言って、手を洗い始めました。
食卓には、彼の好物の肉じゃがが並んでいます。
彼の好みを母に話した覚えは、一度もありません。
食事が進んだところで、私は箸を置きました。
あの言葉への答えを、ここで出すつもりで来たのです。
「この前の話だけど」
そう切り出した私より先に、母が口を開きました。

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母が先に出した答え
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