チャイムを鳴らさず不在票を入れていた配達員の俺が、ドアの前で毎回していたこと

コラム

ドアを開けた住人に、紙を返された

開いたドアの向こうには、靴を履いた女性が立っていました。その足元のたたきに、俺が入れたばかりの白い紙が落ちています。開くまでの早さで、彼女がこのドアのすぐ内側にいたことは分かりました。

「いますよ」

女性にそう言われ、俺は「あ……」と言ったきり、抱えた箱に目を落としました。

「昨日も、この時間に家にいました」

女性の言葉で、この箱が再配達の荷物だとようやく気づきました。物音がしなかったのは、留守だったからではありません。俺は頭を下げて「申し訳ありません」と言いました。

女性はたたきの紙を拾い、こちらへ差し出しました。

「これ、お返しします」

紙を受け取って制服のポケットに押し込み、代わりに箱を渡しました。もう一度頭を下げて、俺は外階段を下りました。

そして...

トラックに戻ると、ダッシュボードには、書き込みを済ませた不在票の束が残っていました。俺はそれを輪ゴムで留めたまま、足元の袋に入れました。

次の部屋では、耳を澄ませる前にチャイムを押しました。返事があるまで、箱を抱えてドアの前で待ちました。あの部屋の住人がこのことをどこかへ伝えたのかどうか、俺は知りません。

(30代男性・配達員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

  • X
  • Line