
両替に手間取る老人に舌打ちが飛んだバス→運転手がマイク越しに言った一言
コラム
入れ替わった空気
白髪の男性がステップを降りきると、スーツの男性はカードをかざして、何も言わずに降りていきました。通路を挟んだ向かいで、画面を見ていた女性が顔を上げ、白髪の男性の背中を窓越しに追っていました。ドアが閉まり、バスが動き出しました。次の停留所の案内は、さっきと同じ低い声でした。私は運賃箱の前に立った白髪の男性の、何度も硬貨を数え直す姿を思い返していました。あの場に立っていたのが自分なら、後ろから聞こえる音をどんなふうに受け取っただろうとも考えました。急かす側に声を掛けず、手が止まっている人にだけ「大丈夫」と伝えたことが、妙に残りました。
そして...
今も同じバスに乗っています。運賃箱の前で誰かの手が止まるとき、以前より少しだけ距離を空けて待つようになりました。あの運転手の声は、今でもときどき思い出します。
(20代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)



























