デートのたびに「先に乗って。俺は次ので帰るから」と言う彼。引き返したホームで見たもの

コラム

「忘れないうちに、書いておきたくて」

すぐ横に立つと、彼が顔を上げました。

「え、戻ってきたの?」

画面を消して、スマホをポケットに入れる。その動きが、いつもの彼より少しだけ速く見えました。

「隣の駅で降りて、戻ってきたの」

「ずっと、何を見てたの?」

彼は線路のほうへ目をやってから、私に向き直りました。

「忘れないうちに、書いておきたくて」

何を、と聞き返すと、彼は少し困ったように眉を寄せました。

「今度、ちゃんと見せるから」

誰かとのやりとりではない。その言い方で、それだけは分かった気がしました。

そして...

帰りは私から「今日は一緒に乗ろう」と言いました。彼はうなずいて、次に来た電車に並んで乗りました。私の駅までの間、彼はスマホをポケットから出さず、私の話に相づちを打ち続けていました。

私の駅で降りて振り返ると、閉まったドアの向こうで彼が小さく手を上げ、それからスマホを取り出しました。私を見送ったあとのベンチで、彼は何を書き続けていたのでしょうか。見せてもらう約束の日は、まだ決まっていません。

(20代女性・事務職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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