俺が妻に聞けずにいたことを、職場の先輩が代わりに送っていた話

コラム

寝室で打っては消した言葉

ドアを閉めて先輩とのチャットを開き、「妻に送ってくれたんですね」と送りました。

「うん、元気そうだったよ。余計なことしたかな」

先輩にそう見えたなら、妻の返信は相手を安心させる文面だったのでしょう。「余計じゃないです」と打っては消し、「ありがとうございます」とだけ送りました。

翌日、仕事の合間に、昨日の先輩のことで何かあったのかと妻からメッセージが来ました。先輩と俺の間に何かあると、妻が考えていてもおかしくない文面だったのです。事情を説明する長い文を打ち、送る前に消しました。画面の上で済ませていい話ではないと思ったからです。20分近くたってから、謝って、帰ったらちゃんと話すとだけ送りました。

そして...

帰宅して、コートも脱がずにダイニングの椅子に座りました。

「先輩に話したの、俺なんだ。最近疲れてるみたいだって」

妻の返事は短いものでした。

パンのことを言おうとして、キッチンの隅に目が行きました。布をかけたままのホームベーカリー。口に出せば、また「平気」と返ってくる気がして、その先は言わないままコートを脱ぎました。

次の休み、スーパーで妻が強力粉を1袋、かごに入れました。焼くのかどうかは、口にしないままです。俺も聞かずに、袋がつぶれないよう、卵のパックの横へ置き直しました。

(30代男性・営業職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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