チャットで彼女を「相棒」と呼び続けた俺→「ちょっと寂しいな」と言われて、初めて書いた両親の話

コラム

「俺にとって相棒って、」。そう書きはじめたメッセージは、気づけば画面に収まらない長さになっていました。読んだ彼女が泣いていたと知ったのは、そのあとのことです。
送ったメッセージに既読がついて、俺はスマホを握ったまま返事を待っていました。同じ会社の別部署で働く、付き合って半年の彼女から、寂しいと言われたばかりです。言われるまで、自分の呼び方がそう見えているとは思ってもいませんでした。

父が母を呼ぶ言葉

俺の実家は、商店街の小さな定食屋です。厨房に立つのは父で、配膳と会計は母。物心ついたときから、2人はずっと並んで店を回していました。
父は母を、名前で呼びませんでした。
「相棒、ご飯あと何杯いける?」
忙しい時間帯、背中合わせで動きながら、父はいつもそう声をかけていました。母はそのたびに笑って「はいはい」と返していました。店が苦しかった時期も、2人が言い争う姿を見た記憶はありません。
子どもの俺には、それが一番かっこいい夫婦の形に見えていました。

同じ言葉を選んだ理由

彼女と付き合いはじめてしばらくして、締め切り前の資料を手伝ってもらいました。終わったあと、俺は自然とこう返していました。
「相棒のおかげで間に合った」
自分の中では、最上級のほめ言葉のつもりでした。一緒にいて頼れて、並んで歩ける人。父が母を呼ぶのと同じ言葉を、ようやく使える相手に出会えた気がしていたのです。
先日、取引先との会食のお店探しを手伝ってもらった日も、候補を3つ送ってくれた彼女に「さすが相棒、助かった」と送りました。送るたびに、少し誇らしい気持ちになっていたほどです。彼女がどう受け取っているかなど、考えたこともありませんでした。

次のページへ

届いた本音
  • X
  • Line