「お前の家族に嫌われてる」と言った彼が、喫茶店で父に「1つだけ聞いてもいいですか」

コラム

父がテーブルに置いたスマホの画面を、彼はしばらく見つめたまま顔を上げませんでした。やがて父に向かって口を開いた彼の声は、思っていたよりずっと落ち着いていました。

喫茶店の窓際の席で、父はコーヒーに手をつけずに待っていました。彼と並んで向かいに座ると、父は小さく咳払いをします。この席を用意したのは、半年前に言われた彼の言葉がきっかけでした。

実家に行かないと言い張る彼

彼と付き合って2年になります。
半年前、初めて実家に連れていったとき、両親はごちそうを用意して迎えてくれました。
食事の途中で、彼は手を洗いに廊下へ出ていきました。
戻ってきた彼は、それから急に口数が減り、早めに帰ろうと言い出したのです。
帰り道、彼はぽつりと言いました。
「お前の家族に嫌われてる」
理由を聞いても、彼は「なんとなく分かる」としか言いません。
両親の態度を思い返しても、思い当たることはありませんでした。
彼が帰ったあと、母は「また連れておいで」と言っていたくらいです。
そう伝えても、彼は首を横に振るだけでした。
それ以来、実家に誘っても、彼は首を縦に振らなくなりました。

父を呼び出した

このままでは先に進めないと思い、父に相談することにしたのです。
父は電話口で少し黙ってから、「一度、外で会おう」と言いました。
彼は渋りましたが、私が頼みこむと、ようやくうなずいてくれました。
喫茶店で向かい合うと、父は鞄からスマホを取り出します。
「母さんとのやりとりを見せる。あの日のあとのものだ」
隣に座る彼の肩が、こわばるのが分かりました。
父は画面を彼のほうへ向けて、テーブルの上にそっと置きます。

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