
「会社員」とだけ答えていた僕→雨の日に「ごめん、今日バタバタしてた」と返しながら貯めていたもの
コラム
気づかなかったバス停
梅雨も終わりに近づいたある日、その日も雨でした。オフィス街の配達で、バス停の前にトラックを止めました。
荷台から箱を3つ抱えて、ビルの中へ走ります。戻ってまた抱えて、また走る。停留所に人が並んでいたことは覚えていますが、誰が立っていたかまでは見ていませんでした。
ポケットのスマホに届いた通知にも、気づきませんでした。
「今、どこにいるの?」
そのメッセージを読んだのは、全部の配達を終えて、日付が変わる少し前のことでした。
そして...
いつものように「ごめん、今日バタバタしてた」と返すと、すぐに電話がかかってきました。
「バス停の前に、トラック止めてたでしょ」
彼女の声は、少しかすれていました。
見られていたと分かって、僕は全部話しました。雨の日は昼ごはんを食べる暇もないことも、花火大会のために手当を貯めていたことも。
「次の雨の日は、おにぎり持っていく」
彼女はそう言って、電話を切りました。
次の雨の日、出がけに開けた玄関のドアノブに、おにぎりの入った袋が掛かっていました。配達の合間にトラックの運転席でそれを頬張りながら、僕は雨の日に初めて、日が暮れる前の返事を送りました。
「今、おにぎり食べてる」
(20代男性・配達員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)






























