「お前は練習台なんだから、黙って聞いてて」と言った俺→練習で読まなかった最後の段落

コラム

マイクの前で

当日、マイクの前に立つと、会場の奥に彼女の姿が見えました。そこからは、2週間の練習を思い出しながら話すだけでした。
新郎の話も、彼女と出会った日の話も、つかえずに言えました。最後の段落を読み終えたとき、新郎が目元を押さえているのが見えたのです。
拍手の中で彼女を探すと、少し遅れて手を叩いていました。練習台と言ったあの日のまま、俺はまだ彼女に何も伝えていなかったのです。

そして...

駅までの帰り道、スピーチをほめてくれた彼女に「ありがとう」と返しました。そのあと、ずっと考えていた言葉を口にします。
「練習台は、今日で終わりな」
照れくさくて早足になり、駅前の横断歩道で足を止めました。振り返って、続きを伝えます。
「これからは、練習じゃなくて毎日聞いてほしい。一緒に住もう」
彼女がうなずくまでの数秒は、スピーチのどの場面よりも長く感じました。練習台と呼んだ彼女は、最初から俺の一番の聞き手でした。

(20代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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