
「約束したっけ?」ととぼけた俺が、約束の画面を見て玄関を出たわけ
コラム
記念日の店を予約しようとして、俺は店の電話がつながらないことに気づきました。とぼけるしかなかった事情は、彼女が見せてきたあの画面の中にも残っていたのです。
テレビを見ていると、ソファの隣で彼女がスマホの通知を見せてきました。来週は、付き合って5年目の記念日です。その話が出たときにどう答えるかは、前の晩から決めていました。
つながらなかった電話
2週間前、記念日の予約をしようと、初デートの洋食店に電話をかけました。何度かけても、呼び出し音が鳴るだけです。
仕事の帰りに寄ってみると、店のシャッターに閉店のお知らせが貼られていました。半年前に、店主の引退で店を閉めていたそうです。
彼女があの店のオムライスを好きなことは、誰よりも知っていました。閉店を知れば、きっと記念日どころではなくなる。そう思って、言い出せずにいたのです。
それからの2週間、料理の得意な友人の家で、あのオムライスを真似る練習をしていました。
とぼけるしかなかった一言
「来週、5年目の記念日だね」
テレビを見たまま「そうだね」と返しました。顔を見たら、全部話してしまいそうだったからです。
「あの店、予約した?」
「約束したっけ?」
忘れたことにすれば、別の店に誘っても不自然ではない。その程度の考えでした。
彼女はスマホを手に取ると、3年前のメッセージを俺の前に差し出しました。
「5年目の記念日には、あの店にもう1回2人で行こう」
「ほら、言ったよ」
次のページへ
画面の下に残っていた返事




























