
「男なら奢って当然」と言った私→3週間前にあの店で会計を済ませていたわけ
コラム
レジの前に先に立った彼
席に戻ると、彼はもう立ち上がるところでした。
「そろそろ出ようか」
彼は伝票を探し、見つからないまま先にレジへ歩いていったのです。追いかけたときには、店員さんがもう首を振っていました。
「お会計は、いただいております」
店員さんは慌てたのか、領収書をそのまま彼に差し出してしまいました。
「あ、それ」
伸ばしかけた手は、途中で止めたままでした。今さら取り返しても、遅いと思ったのです。
私が店員さんに小さく頭を下げたあと、彼が領収書を手にしたまま、こちらを見ているのに気づきました。
そして...
「家に着いたら、電話する」
そう言って改札の前で彼と別れ、部屋に着いてすぐ電話をかけました。翌週が3年目の日だということも、あの言葉がわざとだったことも、全部を話したのです。
「言い方、ほかになかったの」
電話の向こうで彼は少し笑い、それからしばらく黙りこみました。記念日を忘れていたことを、気にしている声に聞こえました。
あの領収書は、今も彼の財布に入ったままだそうです。
「男なら奢って当然」と言った私の3年分のお礼は、いちばん見られたくなかった彼の手に、領収書の形で渡ってしまいました。
(20代女性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)






























