友人の前で妻が言った「結婚は私が妥協してあげた」→玄関の鍵を閉めてから、俺が並べた3年分のこと

コラム

友人を見送ったあと、俺は初めて自分が手放したものを口にしました。妻は返事の代わりに寝室へ向かい、何かを手に戻ってきたのです。

リビングのテーブルの上で、妻の友人が持ってきたケーキの箱が開いていました。結婚して3年、家に友人を招くのは久しぶりのことです。紅茶を注ぎ足していたとき、友人の何気ないほめ言葉に、妻が思わぬ返事をしました。

妥協してあげた、という言葉

妻の友人は学生時代からの付き合いで、結婚式にも来てくれた人でした。
ケーキを食べながら、友人が俺の方を見て言いました。
「優しい人と結婚できてよかったね」
照れて笑いかけた俺の横で、妻がカップを両手で包んだまま答えます。
「結婚は私が妥協してあげた」
友人は眉を上げて「へえ」と言い、すぐに別の話題へ移りました。妻はその間、一度も俺の方を見ていません。
笑って流すべきだったのでしょう。それでも、カップを置く手に力が入りました。

俺が手放したもの

結婚の話が出た頃、俺には本社への異動の話がありました。受ければ、妻とは遠く離れて暮らすことになります。
迷った末に断ったことを、妻には詳しく話していませんでした。学生時代から乗っていたバイクを売って、式の費用に回したことも同じです。
恩を着せるつもりはありませんでした。自分で選んだことだと思っていたからです。
それでも「妥協してあげた」と言われたまま、何事もなかった顔をできる気がしません。
友人が帰り、玄関の鍵を閉めたところで、俺は妻の方を振り返りました。

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口にした本当のこと
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