
「これ、いつから書いてたの」と夫に聞かれた私→友人の前で、夫の顔を見ずに言ったわけ
コラム
夫が「妥協したのは、俺のほうだよ」と言ったことを、私は1つも聞き返しませんでした。引き出しの中に、その答えをずっとしまっていたからです。
ケーキの箱を開けた友人が、部屋を見回して「いい家だね」と笑いました。学生時代から、友人は私の持ち物をよくほめてくれる人です。そのたびに少しだけ、比べられている気がしていました。
友人の前で
友人は昔から、恋人の話になると、相手の稼ぎや優しさを比べたがる人でした。
「優しい人と結婚できてよかったね」
そう言われたとき、続きが読めました。あんたは頼りっぱなしだね、と笑われる流れです。
本当に頼りっぱなしだと分かっているからこそ、それだけは言われたくありませんでした。
「結婚は私が妥協してあげた」
カップを両手で包んだまま、友人の顔だけを見て言いました。夫の方を見たら、言えなくなると分かっていたのです。
友人は眉を上げて「へえ」と言い、それ以上は聞いてきませんでした。
全部知っていたこと
夫が本社への異動を断ったことは、結婚前から知っていました。夫の部屋の机に、異動の案内が置いてあったのを見ていたのです。
学生時代から乗っていたバイクが、駐輪場から消えた日のことも覚えています。式の費用の振込が、急に余裕を持って済んだことも。
夫は何も言いませんでした。だから私も、聞けないままでした。
代わりに、寝室の引き出しに1冊のノートを入れていました。夫が手放したものと、いつか返したいことを書きためたノートです。
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驚けなかった理由




























