親友に「やっぱり今度でいい」と言った私→上の空だった2カ月間の事情

コラム

改札で言いかけた続き

店を出て改札まで歩く間、次に会う日の話はどちらからも出ませんでした。来月になれば、ここで会う約束はもうできなくなる。それが頭から離れませんでした。

改札の手前で足を止めて、今度こそ言おうと思いました。

「あのさ、」

けれど、こちらを見ている親友の顔を見たら、さっき聞かれたことを思い出しました。今ここで異動の話をしたら、最近上の空だった理由まで一度に突きつけるような気がしました。

「やっぱり今度でいい」

振り返ったら引き返せなくなりそうで、そのままホームへ向かいました。

帰りの電車で、事情を全部書いたメッセージを打っては消しました。数日後にようやく送ったのは、肝心なことを何も書いていない1通です。

「次会うとき、ちょっと話したいことがある」

「わかった」とだけ返ってきました。

そして...

次に会った日、いつものカフェで、内示のことから順番に話しました。来月には九州へ移ること、ずっと言い出せなかったこと。

親友はアイスコーヒーのストローを長い間回してから、口を開きました。

「九州かあ。遠いね」

「うん」

私がうなずくと、親友は窓に目を向けました。

「ここで月に2回会うの、当たり前だと思ってた。寂しくなるな」

親友は少し間をあけて続けました。

「ずっと、私の話がつまんないのかと思ってた」

親友がずっとそう考えていたとは、思っていませんでした。謝ると、少し笑った親友からこんな返事。

「じゃあ、引っ越すまでにあの企画の話、最初から聞いてね」

上の空だった2カ月分を取り戻すように、その日はスマホをバッグにしまったまま、企画の話を最初から聞きました。

(20代女性・営業職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

  • X
  • Line