「昇進した女は可愛くない」と言った彼が、私の昇進の日に台所で見せた顔

コラム

「昇進したよ。可愛くない女になっちゃった」。笑って言ったつもりでしたが、振り向いた彼の顔は、これまで見たことのないものでした。

ベランダの洗濯物を取り込もうと、リビングを横切ったときのことでした。ソファの彼は、スマホの画面をじっと眺めています。すれ違いざまに聞こえてきた言葉に、思わず足を止めました。

すれ違いざまの言葉

「昇進した女は可愛くない」
彼はスマホから目を上げずに、はっきりそう言いました。
同棲して3年になる彼の口から、そんな言葉を聞くとは思っていませんでした。
聞かなかったふりをして、私はベランダに出ます。
ガラス戸を閉めて、乾いたタオルを1枚ずつたたみました。
そのころ私は、会社で課長への昇進の面談を受けたばかりだったのです。
彼に真っ先に話すつもりだったその報告を、私は飲み込みました。
それからは、仕事の話を自分からはしなくなっていったのです。

台所に立つ背中

数週間後、私の昇進が正式に決まりました。
会議室で辞令を受け取ったとき、最初に浮かんだのは、やはり彼の顔でした。
家に帰ると、彼は台所に立ってフライパンを振っています。
「おかえり」
振り向かずにそう言った背中に、鞄を置いて声をかけました。
「昇進したよ。可愛くない女になっちゃった」
笑って言ったつもりでしたが、声は少しとがっていたと思います。
フライパンを揺する音が、ぴたりと止みました。
ゆっくりと振り向いた彼の顔は、これまで見たことのないものだったのです。

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見たことのない顔
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