「家にいるだけの女」と言った俺→真っ暗な家から妻を探し回ったわけ

コラム

電話は何度かけても、電源が入っていないというアナウンスが流れるだけでした。妻の行きそうな場所を、俺は1つも思いつけなかったのです。

ソファに座り込んだまま、取引先へのメールを打っていました。妻に話しかけられたのは、ちょうど謝罪のメールを書いている最中です。顔を上げないまま、口が勝手に動いていました。

言ったあとで

「明日、ゴミ出しだけお願いできる?」
「家にいるだけの女に、俺の大変さは分からないだろう」
妻は「分かった」とだけ言って、寝室に入っていきました。言い過ぎたと気づいたのは、メールを送り終えてからです。
仕事を辞めて家のことを引き受けてもらったのは、2人で決めたことでした。それを忘れたような言い方をしたのは、俺のほうです。
謝るなら、きちんと謝りたい。そう考えて、数日たった日に早めに仕事を切り上げました。

明かりのない家

早めに帰った家は、真っ暗でした。
玄関の鍵を開けても、誰の声もしません。ベランダには洗濯物が干したままで、空には雨雲が広がっていました。
妻に電話をかけましたが、つながりません。何度かけても同じでした。
洗濯物を取り込んで、ソファの上に置いていきます。たたみ方が分からず、山のようになっていきました。そのとき、妻がどこへ行きそうか1つも思いつかない自分に気づいたのです。妻の友人の連絡先も、俺は1つも知りません。
この家の明かりをつけていたのは、毎日妻でした。

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改札の前で
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