
「誰に会うの?」に「それは、まだ言えない」と答えた俺→ノートに並べた質問の先で会おうとしていた人
コラム
数週間ぶりに送ったメッセージは「次の休み、少し時間ちょうだい」でした。ノートに並べた質問の先にいたのは、彼女がよく知っている人たちです。
転職サイトの画面を開いたまま、彼女がお茶を淹れて戻るのを待っていました。言い出すなら今日だと、ずっと前から決めていたからです。3つ年上の彼女にどう切り出すか、頭の中で何度も練習していました。
言われたくなかった言葉
付き合って2年になります。彼女の実家に挨拶に行きたいと考えはじめたのは、半年ほど前でした。そのために、まず今より安定した職場に移りたかったのです。
画面を彼女に向けて、切り出しました。
「転職しようと思ってる」
「辞めるなら、次を決めてからのほうがいいよ」
彼女の言うことが正しいのは分かっていました。けれど、その口ぶりが、弟を心配する姉のように聞こえたのです。結婚を考えている相手に、子ども扱いされたくありませんでした。
「年上ぶるな」
言った直後に後悔して、ノートパソコンを閉じてキッチンへ逃げました。
頼れるのは彼女だけ
気まずさから、そのあとは返事が短くなりました。そのくせ、彼女の両親に会う準備だけは進めていたのです。新しい職場も、なんとか決まりました。
困ったのは、挨拶の作法でした。スーツの色も、最初に何を言えばいいかも、俺には分かりません。彼女の両親のことを一番知っているのは、彼女です。
「次の休み、少し時間ちょうだい」
「いいよ」と届いて、すぐに「ありがとう」と返しました。
当日着ていったのは、練習のつもりで選んだ紺のジャケットです。彼女の部屋で正座してノートを出し、覚悟を決めて言いました。
「今日だけは、年上として聞いてほしい」
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言えなかった相手





























