「家にいるだけの女」と言った夫→数日後、駅の改札前で「どこ行ってたんだよ」

コラム

電源を切ったままのスマホを思い出したのは、改札を出たあとでした。券売機の前に立っていた夫は、シャツの裾が片方だけ出ていて、肩で息をしていたのです。

洗濯物を取り込んでいると、帰ってきた夫がネクタイをゆるめながらソファに座り込みました。膝の上でスマホを打つ指は、いつもより速く動いています。ゴミ出しを頼んだのは、その少しあとのことでした。

ソファの上の言葉

「明日、ゴミ出しだけお願いできる?」
夫は画面から目を上げずに答えました。
「家にいるだけの女に、俺の大変さは分からないだろう」
結婚して4年、仕事を辞めて家のことを引き受けたのは、2人で決めたことです。言い返したい言葉は、いくつも浮かびました。それでも、口にしたのは「分かった」だけでした。
寝室に入ってから、本棚の奥にしまっていた簿記のテキストを取り出しました。試験は数日後です。受けることは、夫にはまだ話していません。

試験の日

試験の日は、夫が仕事に出たあとで家を出ました。会場でスマホの電源を切るよう言われ、そのまま鞄の奥にしまいます。
問題は思っていたより難しく、会場を出る頃には外が暗くなりはじめていました。駅前のカフェで答え合わせをしているうちに、つい長居をしてしまったのです。合格したら、夫に話すつもりでいました。
最寄り駅に着いて改札を出ると、見覚えのある背格好が目に入りました。
券売機の前に立っていたのは、夫でした。スーツの上着を腕にかけ、シャツの裾が片方だけ出ています。肩で息をしながら、夫はまっすぐこちらへ歩いてきました。

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