「ねえ、見てる?」既読がつかない夫に電話→隣の部屋から着信音が聞こえて、私は黙った

コラム

耳元の呼び出し音と、壁の向こうのメロディが同じ間隔で重なっていました。夫の部屋のドアを開けた私に返ってきたのは、あまりにのんきな一言でした。

その30分ほど前、買い物袋をキッチンの床に下ろし、冷蔵庫を開けたところで牛乳を買い忘れたことに気づきました。夫に頼もうとチャットを開くと、スーパーへ向かう途中に送ったメッセージが、一番下に残ったままでした。既読は、まだついていません。

ジムに行ったはずの夫から返事がない

夫が「ジム行ってくる」と玄関を出たのは、昼過ぎでした。いつもなら2時間もあれば戻ってきます。

そのあと、私も買い出しに出かけました。駅前の掲示板に温泉地のポスターが貼られているのを見つけて、歩きながら夫に送ったのがこの1通です。

「来月の連休、久しぶりに2人でどこか行かない?行きたいとこ考えといて」

帰宅したとき、リビングの電気は消えていました。両手が袋でふさがっていて、玄関の靴までは見ていません。まだトレーニング中なのだろうか。そう考えて、続けて送りました。

「まだジム?」

「帰りに牛乳買ってきてほしい」

壁の向こうから聞こえたメロディ

食材を冷蔵庫にしまいながら確かめても、画面の表示は変わりません。2分ほどして、次のメッセージを打っていました。

「ねえ、見てる?」

これにも既読はつきません。更衣室のロッカーにスマホを入れっぱなしなのかもしれない。洗濯物を取り込んでたたみ、お風呂を洗い、そのたびにスマホを裏返しては確かめました。

20分が過ぎても、画面はそのままです。牛乳のために電話をかけるのは大げさな気もしましたが、しびれを切らして通話ボタンを押しました。

耳元で呼び出し音が鳴り始めると同時に、聞き覚えのあるメロディが流れ出しました。夫の着信音です。音がするのは、リビングの隣にある夫の部屋でした。

耳元の呼び出し音と、壁の向こうのメロディ。2つが同じ間隔で重なっていくのを聞きながら、私は黙りました。

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