
毎日同じ時間に売り切れる惣菜屋のコロッケ→取り置きを頼んだ日、カウンターの前で振り向いた先客
コラム
ショーケースの中で、コロッケのトレーだけがまた空になっていました。端に置かれているのは、手書きの「売り切れ」の札。駅前の商店街にあるこの惣菜屋で、それを見て来た道を引き返すのは、もう何度目か分かりません。
仕事帰りに寄ると、いつも空のトレー
この店のコロッケを初めて食べたのは、引っ越してきてすぐの休日でした。衣が薄くて、中のじゃがいもがほんのり甘い。仕事帰りに寄るのがささやかな楽しみになりました。
ところが、仕事帰りに寄るとコロッケはいつも売り切れ。しかも札が置かれるのは、決まって私が着く直前です。
「今日もか」とつぶやいて、駅前のコンビニでお弁当を買う日が続きました。店主は札を置くと、奥で片付けを始めます。こちらに気づいているのかどうか、目が合ったことは一度もありません。
なんでいつも無いんだろう。同じ時間に、誰かがまとめて買っていくのかもしれない。常連さんの分だけ、先に取ってあるのかもしれない。考えるうちに、店の前を通るのが少しおっくうになっていきました。
思い切って取り置きを頼んだ日
ある日、会社の休憩中に、店の番号へ電話をかけました。
「あの、今日、コロッケを2つ取っておいてもらえますか」
電話に出た店主は、少し間を置いてから答えました。
「2つですね。お名前をうかがってもいいですか」
名前を伝えて電話を切ったあとも、店主が答える前の間が頭に残っていました。
その日は仕事を早めに切り上げ、いつもより少し早く商店街に入りました。店が見えたところで、カウンターの前に先客がいるのに気づきます。店主がトレーのコロッケを、大きな紙袋に次々と移していました。
最後の1つが袋に入ったとき、先客がこちらを振り向きました。
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振り向いたのは、見覚えのある人





























