妻の味噌汁を「薄い」と残していた俺→母に作り方を聞いて知った「実家の味」の正体

コラム

母の味を作るつもりでした

休日、妻が買い物へ出たあと、母に電話しました。「味噌汁って、どう作ってた?」と聞きました。母は、「急にどうしたの」と笑いました。だしや味噌の量を聞こうとすると、「毎回適当よ」と言われました。俺は、「でも、うちの味噌汁ってもっと濃かっただろ」と聞きました。すると母は、「あんたが濃いの好きだったからね」と答えました。「俺に合わせてたの?」。「そりゃそうでしょ。お父さんはもう少し薄いほうが好きだったけど、あんたがよく飲むから濃くしてたの」。その返事を聞いて、これまで妻に言ってきた「薄い」を思い返しました。俺がずっと「実家の味」だと思っていたものは、家の決まった味ではありませんでした。母が俺の好みに合わせて変えていた味でした。それなのに俺は、その味を普通だと思い、妻にも同じものを求めていました。電話を切ったあと、冷蔵庫を開けました。妻が普段使っている分量を書いたメモが貼ってあります。俺は、その通りに味噌汁を作ることにしました。

書かれている通りにだしを入れ、味噌を溶きました。味見をすると、やっぱり俺には少し薄く感じました。いつもの俺なら、ここで味噌を足していたと思います。でも、そのままもうひと口飲みました。これが妻が毎日作っていた味です。俺が「薄い」と言って残していたものを、自分で最後まで作ってみようと思いました。そこへ妻が帰ってきました。「何してるの?」と聞かれ、「味噌汁」と答えました。少し迷ってから、「言っていいことじゃなかった。ごめん」と伝えました。妻はすぐには何も言いませんでした。俺は、母に電話したことを話しました。「母さんに味噌汁の作り方を聞いた」と話すと、妻は「私のじゃなくて?」と聞き返しました。「最初は、実家の味を作ろうと思ってた」と答えました。「でも、母さんに『あんたが濃い味好きだったから濃くしてただけ』って言われた」、そこまで言うと、自分でも情けなくなりました。「ずっと、母さんの味が普通なんだと思ってた。でも、あれも俺に合わせてくれてただけだった」。俺は冷蔵庫のメモを指しました。「だから今日は、これで作ってみた」。

そして...

妻が味噌汁を味見しました。俺も自分の椀へよそいました。妻から、「薄い?」と聞かれました。少し考えてから、「前なら薄いって言ってたと思う」と答えました。「今は?」。「少なくとも、薄いから駄目っていう味じゃなかった」。妻は、「実家と同じにする必要はないよ」と言いました。妻からはもう1つ、「味が合わないなら普通に言って。でも、『カップ麺のほうがマシ』みたいな言い方はもうやめて」と言われました。俺はもう一度謝りました。今は休日に、俺が味噌汁を作ることがあります。妻から、「今日ちょっと濃い」と言われる日もあります。俺も、「今日はもう少し濃いほうが好きかも」と言います。味の好みを伝えることまでやめたわけではありません。ただ、実家の味を基準にして、妻の料理を上か下かで決めることはなくなりました。母の味も、妻の味も、誰かに合わせながら作られているものだった。そのことを知ったのは、自分で初めて鍋の前に立った日でした。

(30代男性・営業職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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