杖の女性が目の前に立っても優先席で目を開けなかった俺→「説明する義務はない」と思った理由

コラム

それは、そうです

終点で、車内に残ったのは俺1人でした。ホームの駅員に片手を上げ、肩を借りて降りました。

「足をひねっただけなので、タクシー乗り場までで大丈夫です」

そう言ったところで、扉の脇に立っていた女性と目が合いました。あの声の人だと、すぐに分かりました。女性は鞄の持ち手を握り直して、俺たちのほうへ歩いてきました。

「さっき、聞こえるように言いました。すみませんでした」

「聞こえてました」

頭を下げられても、嫌味を言われたことへの腹立たしさは残っていました。

「でも、別に説明する義務はないと思ってたので」

「そうですか」

女性はそれだけ返して、俺の右足を見ました。分かってて目を閉じてたんですよね、とは言われませんでした。言われなくても、それは、そうです。杖の音が止まったあの数秒が、そのまま戻ってきました。

そして...

駅員と女性で、俺をタクシー乗り場まで送ってくれました。鞄は女性が持ってくれました。礼を言えば、全部認めたことになる気がしていました。乗り込む前、俺は少し黙ってから言いました。

「あの人には、言えばよかったです」

女性は「そうですね」とだけ返しました。説明する義務があると思ったわけではありません。ただ、あの人が目の前で困っていたことまで、仕方ないで済ませるのは違ったと思いました。

数日後、通勤に戻ってからも足をかばって座っていました。杖をついた人などが前に立ったときは、「足を痛めています」と伝えるようになりました。

(40代男性・営業職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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