
舌打ちした客を叱らなかったが、老人だけに声をかけた理由
コラム
急かす人には何も言わなかった
それからは、舌打ちを聞いても、その人には話しかけないようにしています。声をかけるのは、手が止まっている人だけです。マイクのスイッチを入れました。
「お客様、ゆっくりで大丈夫です。お気になさらず」
叱るつもりはありませんでした。舌打ちした人ではなく、目の前で謝っている男性にだけ「急がなくていい」と伝えました。男性は硬貨を1枚ずつ入れ、最後の1枚を拾ってから、もう一度頭を下げました。
「ありがとうございました。足元、お気をつけて」
男性が降りきるまでドアは閉めませんでした。続いてスーツの男性がカードをかざし、何も言わずにステップを降りていくのが、ミラーの中に見えました。その人が何を思ったのかは、私には分かりません。分かるのは、今度は手が止まっていた人だけに「急がなくていい」と伝えられたことです。
そして...
今も運賃箱の前で手が止まる人がいれば、同じように声をかけています。急かしている人に注意するためではありません。待っている人の反応を変えるより、目の前で困っている人に「大丈夫です」と伝えるほうを選ぶようになりました。あの日以来、急かした人へ向けた言葉は、マイクに乗せていません。
(50代男性・バス運転士)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)



























