「保険なんて騙されてる」と言う彼が、洗濯機の水漏れで「保険は使わない。俺が払う」

コラム

引き出しから出したもの

「部屋の保険、入ってるから」
私が声をかけると、彼は振り向かずに首を横に振りました。
「保険は使わない。俺が払う」
戻ってきた彼の手にあったのは、見たことのない通帳でした。
彼はテーブルの上で通帳を開き、私のほうへ向けます。
「これで足りるはずだから」
並んでいた数字は、私が思っていたよりずっと大きなものでした。
彼が自分の貯金の話をしたことは、これまで一度もありません。
外食のたびに安いほうの店を選ぶ人だと、私は思っていたのです。

そして...

彼は通帳を閉じて、自分の鞄の内ポケットに入れました。
「明日、下ろしてくる」
私は保険の書類の控えを出して、テーブルの上に置きました。
彼はそれを一度も見ないまま、洗面所の床をもう一度拭きに行きます。
次の日、出かけようとする彼の前に、私は控えを持って立ちました。
「1回だけ、電話させて」
保険会社の担当者によると、下の階の修理費も補償の対象になるそうです。電話を切って「だから言ったでしょ」と言うと、彼は私に頭を下げました。
どうしてそこまで、私の保険を使いたくなかったのか。
あの通帳のお金は、本当は何のためのものだったのでしょうか。

(30代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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