
「ありがたいお話ですが、お受けできません」と電話で断った俺→倍近い年収より選びたかったもの
コラム
ガラス戸の音
電話を終えて出ていくと、カウンターの前に彼女が立っていました。手には俺の財布があり、目はカウンターの書類に向いています。忘れ物を届けに来てくれたのだと、すぐに分かりました。書類を出しっぱなしにしていたのは、俺の落ち度です。
「見た?」
「断ったの?」
うなずきながら、書類を封筒に戻しました。彼女が何か言いたそうにしているのは分かっていても、職場で話せることではありません。
「帰ったら話す」
財布を受け取り、封筒はカウンターの下の引き出しにしまいました。
そして...
彼女の部屋で、条件のことと断った理由を話しました。彼女のお父さんの話を出すと、彼女はしばらく下を向いていました。それから顔を上げて、友人に「うちの彼、年収低くて」と笑ってしまったことを打ち明けてくれたのです。
怒る気にはなれず、笑って本当のことだと返しました。彼女は笑わずに「ごめん」と言って、黙って台所に立ち、2人分のお茶をいれてくれました。
年収の欄の数字は低いままですが、彼女と向かい合って夕飯を食べる回数なら、誰にも負けないつもりです。
(20代男性・印刷所勤務)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)































