
位置情報を送り合う私たち→毎回、花屋の前で5分止まる彼のピンに、思い切って送った一行
カップル
疑いを抱えたまま、思い切って一行だけ送りました。既読はすぐについたのに、地図の上のピンは店の前から動きませんでした。
スマホの地図の上で、彼のピンがまた同じ場所で止まりました。駅から彼の部屋までは、歩いて10分ほどの一本道でした。その途中で足を止める理由が、どうしても思い当たりませんでした。
同じ場所で止まるピン
付き合って2年を過ぎたころ、私たちは位置情報を共有するアプリを入れました。お互いの現在地が地図上のピンで見られる仕組みで、別々に暮らす2人には、帰り道が分かるだけでも安心材料でした。
彼は仕事帰りに必ず「駅ついた」と送ってくる人でした。それを合図に地図を開き、ピンが部屋へ向かうのを見届けるのが、いつの間にか習慣になっていました。
違和感を覚えたのは、先月の終わりです。駅を出たピンが途中で5分ほど止まり、また動き出しました。地図を拡大すると、そこには小さな花屋がありました。次の日も、その次の日も、ピンは同じ店の前で同じくらい止まっていたのです。
いつも通りと言った彼
花をもらった覚えは、これまで一度もありません。自分の部屋に飾っているのかと考えてみても、彼の部屋で花瓶を見たことはありませんでした。
遠回しに探りを入れたくて、「最近帰り遅くない?」と送りました。返ってきたのは「そう?いつも通りだよ」という一行だけ。
5分のずれは、地図を見ていなければ誰も気づかない程度でした。それでも、彼が「いつも通り」と言い切ったことが引っかかりました。
誰かに贈る花を選んでいるのだろうか。誰かと待ち合わせているのだろうか。浮かぶ想像はどれも知らない誰かに向かっていて、そのたびにアプリを閉じては、また開いてしまいました。見張るために始めたわけではなかったのに、と画面を伏せたこともあります。
その日も「駅ついた」が届き、ピンは花屋の前で止まりました。今聞かなければ、ずっとこのままだと思いました。
「今、花屋さんの前にいるよね」
送信してすぐに既読がつきました。けれど返事は来ません。地図の上のピンも、店の前から少しも動きませんでした。
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既読のあとの長い沈黙




























