
母に「ケチ」と言い返してきた私。母の引き出しで見つけた、私の名前が入った書類
ライフスタイル
封筒の中に入っていたもの
自分の名前が書いてある以上、私に関係するものなのでしょう。迷ったのはほんの少しの間で、気づけば封筒のふたを開けていました。
入っていたのは、保険の証書です。
契約者の欄には母の名前、被保険者の欄には私の名前。契約日をたどると、私が8歳のころの日付でした。母はこれを、20年近く払い続けてきたことになります。
そのとき、インターホンが鳴りました。ふたを差し込む余裕もなく封筒を引き出しに戻し、印鑑を持って玄関へ。荷物を受け取ってリビングに戻っても、もう一度封筒を開ける気にはなれませんでした。勝手に見てしまった後ろめたさのほうが、ずっと大きかったからです。
ソファに座ると、母に向けてきた言葉が1つずつよみがえってきました。「ケチ」と言うたび、母は言い返さずに背中を向けていました。何年も同じコートを着ているのも、外でお茶をすることがほとんどないのも、ただの性格だと決めつけていたのです。
そして...
パートから帰ってきた母は、リビングに入るなり言いました。
「電気、つけっぱなしよ」
見ると、私の部屋のドアの隙間から明かりが漏れています。いつもなら「今消そうと思ってた」と言い返すところでした。
「うん、ごめん。消すね」
私がそう返すと、母はこちらを見て、それから何も言わずにキッチンへ向かいました。冷蔵庫を開ける母の背中を見ながら、引き出しの封筒のことを考えていました。
20年近く払い続けてきたものを、母はどうして一度も口にしなかったのか。あの封筒を、いつ、どんな顔で私に渡すつもりだったのでしょうか。
(20代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)































